小児にみられるアレルギー疾患として、気管支喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、じんましんなどがあります。
当院では、お子さまの症状の経過を詳しくお聞きして適切な診察を行います。必要に応じて、アレルギーの原因の特定と治療に役立つ血液検査(抗原特異的IgE抗体検査)を行っています。
近年、小児におけるスギ花粉やダニによるアレルギーが増加しています。当院では、これらのアレルギー症状に対応するため舌下免疫療法を提供しており、個々の患者さまに合わせた治療計画を立てています。
気管支喘息(ぜんそく)
特徴
気管支喘息は、気道にアレルギー性の炎症があり、さまざまな刺激に対して過敏に反応するため、呼吸が苦しくなる病気です。
症状
気管支喘息の症状は、気道がさまざまな刺激に対して過敏に反応することで現れます。代表的な症状には以下のものがあります。
- 呼吸困難:「ぜーぜー」「ひゅーひゅー」という音が出る
- 咳:特に夜間や早朝に出やすい
- 息苦しさ:運動後や風邪をひいたときに悪化することがある
- 睡眠困難:夜間に症状が悪化しやすいため、十分な睡眠が取れない
治療の重要性
気道の炎症を治療しないと、繰り返し発作が起きます。ダニや煙、ペットの毛などの刺激が発作の引き金となることがあります。風邪をひくと症状が悪化しやすく、大きな発作が起きると呼吸困難になり、命に関わることもあります。医師の指示に従って薬を服用し、発作を予防することが重要です。
子どもの様子を見るポイント
- 泣いたり不機嫌になることが増えた
- 風邪をひくたびに咳が続く
- 呼吸するときに「ぜーぜー」「ひゅーひゅー」と音がする
- 遊んだあとに咳が出る
- 夜間や早朝に苦しそうに咳をする
重症度の分類
気管支喘息の重症度は、症状の頻度と強さで分けられます。
- 間欠型:軽い症状が年に数回
- 軽症持続型:軽い症状が月1回以上、週1回未満
- 中等症持続型:軽い症状が週1回以上
- 重症持続型:毎日症状があり、週1〜2回大きな発作がある
治療
気管支喘息の治療は大きく3つに分けられます。
- 発作治療薬:発作時に気道を広げる
- 短時間作用性β2刺激薬(気管支拡張薬):例:サルブタモール(ベネトリン)
- 抗炎症治療:長期管理薬で炎症を抑える
- 吸入ステロイド薬:例:フルタイド(フルチカゾン)、パルミコート(ブデソニド)
- ロイコトリエン受容体拮抗薬:例:シングレア(モンテルカスト)、キプレス(モンテルカスト)
- 環境整備:ダニやホコリを減らす
自己管理の重要性
気管支喘息の治療は患者さんが主体的に行うことが重要です。保護者や医師、看護師と協力して、発作治療と長期管理を進めます。以下の点に注意して自己管理を行いましょう。
- 定期的な薬の服用:症状がなくても医師の指示通りに薬を使用します。
- 発作の兆候を早期に察知:発作の兆候を見逃さず、早めに対応します。
- 生活習慣の改善:ストレスを避け、規則正しい生活を心がけます。
定期的な診察と自己管理を続けて、快適な日常生活を目指しましょう。
さらに詳しい情報を知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。
アレルギーポータル:小児のぜん息
乳幼児のゼーゼー
乳幼児は、解剖学的に鼻腔の形状が年長者とは異なり、また生理学的にも扁桃肥大がみらます。一方、気道は内径が狭く、また粘膜分泌腺などが過形成で分泌物が多く、横隔膜が水平で呼吸運動が小さいなど特徴があります。自力での鼻汁や痰の排出も困難です。また細菌性やウイルス性の気道感染(鼻炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎など)にかかる頻度も高く、特に、家族のタバコ(受動喫煙)を避けることもできません。
以上から乳幼児は、喘鳴(ゼーゼー、ヒュウーヒュウー)を生じ易く、喘息との鑑別は重要です。
2023年の小児気管支喘息のガイドラインでは、5歳以下の繰り返す喘鳴(ゼーゼー)のうち、24時間以上続く呼気性の喘鳴が3エピソード以上繰り返す場合、気管支拡張剤(β2刺激薬)などの治療を行い症状が改善し、治療中断後に再発することが確認されれば、乳幼児喘息と診断されます。治療には、症状のコントロールを目指し、吸入ステロイド薬や長時間作用性β2刺激薬の使用を含めた個別化されたアプローチが推奨されます。
花粉症
特徴
花粉症は、スギやヒノキなどの花粉が原因で、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、充血などの症状が現れる病気です。
原因
花粉症の約70%はスギ花粉が原因です。スギは関東や東海地方で多く見られ、関西ではヒノキも多く見られます。
花粉の飛散時期
- スギ:1月から5月
- ヒノキ:3月から6月
- シラカンバ:5月から6月(北海道)
- イネ科:6月から9月(北海道)、一年中(本州以西)
- キク科:8月から10月
症状
花粉症の主な症状には、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみがあります。これにより集中力が低下し、睡眠不足や生活の質が低下することがあります。また、口腔アレルギー症候群として、果物や生野菜を食べた後に口や喉のかゆみやしびれが現れることがあります。
治療
- 薬物療法:
- 抗ヒスタミン薬:鼻水やくしゃみを抑える
- 点鼻ステロイド薬:鼻の炎症を抑える
- ロイコトリエン受容体拮抗薬:鼻づまりを改善する
- 点眼薬:目の症状を抑える
- レルゲン免疫療法:アレルゲンを少量ずつ体内に投与し、アレルギー反応を弱める治療法で、当院では以下の舌下免疫療法を積極的に行っています。
- 舌下免疫療法:アレルゲンを含む薬を舌の下に投与し、毎日行う治療です。日本ではスギ花粉とダニが保険適用となっており、治療は数年以上続ける必要があります。初めは少量から始め、徐々に増やしていきます。自宅で簡単に行えるため、患者さんの負担が少なく、根本的な体質改善が期待できます。
- 手術療法:薬物療法で効果が得られない場合に考慮
自己管理
- 鼻のケア:生理食塩水で洗浄し、粘膜を保護
- 目のケア:人工涙液で洗浄し、コンタクトレンズを避ける
- 生活環境の改善:室内を加湿し、花粉を持ち込まないように注意
外出時の注意
- 花粉情報の確認:花粉が多い日は外出を控える
- 服装:花粉が付きにくい服装を心がける
- 帰宅時の対応:帰宅時に花粉を払い、すぐに着替えて顔を洗う
早めの治療と自己管理で、花粉症の症状を軽減し、快適な生活を送りましょう。
さらに詳しい情報を知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。
アレルギーポータル:花粉症
アレルギー性鼻炎
特徴
アレルギー性鼻炎は、ダニやホコリによる通年性鼻炎と、スギやヒノキの花粉による季節性鼻炎(花粉症)に分けられます。主な症状は、くしゃみ、透明な鼻水、鼻づまりです。鼻づまりがひどいと口呼吸になり、感染症のリスクが高まります。
症状
- くしゃみ:連続して多く出る
- 鼻水:無色でサラサラした水溶性
- 鼻づまり:鼻の粘膜が腫れることで起こる
これらの症状により、生活に支障が出ることが多いです。
治療
- 薬物療法:
- 抗ヒスタミン薬:くしゃみや鼻水を抑える
- 点鼻ステロイド薬:鼻の炎症を抑える
- ロイコトリエン受容体拮抗薬:鼻づまりを改善する
- レルゲン免疫療法:
- アレルゲンを少量ずつ体内に投与し、免疫反応を弱める治療
- 舌下錠(ダニ、スギ花粉)と注射(ダニ、花粉、カビ)がある
- 数年以上の治療が必要で、根気が必要
- 手術療法:
- 鼻の粘膜をレーザーで凝固する手術
- 薬物療法で効果がない場合に考慮
鼻のケア
- 洗浄:市販の生理食塩水を使用して鼻を洗浄
- 粘膜の保護:白色ワセリンや保湿ティッシュで鼻の荒れを防ぐ
- 加湿:室内を加湿して鼻腔の粘膜を保護
- マスクとメガネ:花粉の吸入を減らし、症状を軽減
外出時の注意
- 花粉情報を確認し、花粉が多い日は外出を控える
- 帰宅時に花粉を払い、着替えて顔を洗う
アレルギー性鼻炎の適切な治療と自己管理で、快適な毎日を取り戻しましょう。
さらに詳しい情報を知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。
アレルギーポータル:アレルギー性鼻炎
アレルギー性結膜炎
特徴
アレルギー性結膜炎は、目に生じるアレルギー疾患の総称です。主なアレルゲンには、スギやヒノキ、イネ、ヨモギ、ブタクサなどの花粉、ハウスダスト、動物の毛やフケ、カビや化学物質などが含まれます。アレルゲンの種類や季節によって、通年性(ハウスダストやペット)と季節性(主に花粉)に分けられます。他にも、アトピー性角結膜炎や春季カタル、巨大乳頭性結膜炎など、治療の難しい疾患も含まれます。
症状
目は外界に接しているためアレルギー反応が起こりやすく、これにより、目のかゆみ、赤み、涙目、異物感、まぶたの腫れなどの症状が現れます。
治療
アレルギー性結膜炎の治療は、主に薬物療法が中心です。重症度に応じて以下の治療が行われます。
- 軽度:抗アレルギー点眼薬・抗ヒスタミン点眼薬
- 中等度:これらに加えて低用量ステロイド点眼薬、ステロイド眼軟膏、タクロリムスやシクロスポリンなどの免疫抑制点眼薬
- 重度:高用量ステロイド点眼薬、経口ステロイド薬、瞼結膜下注射、乳頭切除術など
アレルギー疾患の合併がある場合は、医師に治療経過を伝えることが大切です。適切な治療で、目の健康を守りましょう。
さらに詳しい情報を知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。
アレルギーポータル:アレルギー性結膜炎
食物アレルギー
特徴
食物アレルギーは、特定の食べ物を食べたり触れたりした後にアレルギー反応が現れる疾患です。主な引き金となる食品には乳製品、卵、魚介類、ナッツ類、大豆、小麦、果物などがあります。特に新生児や乳児ではミルクや母乳中のタンパクが原因となることがあり、これが血便や下痢を引き起こすことがあります。多くの場合、子どもの食物アレルギーは成長とともに改善し、原因食物が食べられるようになります。
症状
食物アレルギーの症状は、皮膚、呼吸器、消化器などさまざまな臓器に現れます。
- 皮膚症状:かゆみ、じんましん、むくみ、発赤
- 呼吸器症状:くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、息苦しさ
- 粘膜症状:目の充血や腫れ、口や唇の違和感や腫れ
- 消化器症状:下痢、吐き気、嘔吐、血便
- 神経症状:頭痛、意識もうろう
生命の危険が伴う場合を「アナフィラキシーショック」と言います。
特殊な食物アレルギー
- 食物依存性運動誘発アナフィラキシー:特定の食べ物を摂取した後に運動をすることでアナフィラキシー反応が引き起こされます。この反応は、単に食べ物を食べただけでは発生せず、運動が加わることで症状が誘発されます。主なアレルゲンは小麦や甲殻類です。食後2時間は運動を避ける必要があります。
- 口腔アレルギー症候群:特定の果物や野菜を食べた際に、口や喉にアレルギー反応が起こる疾患です。これは、花粉アレルゲンに対するIgE抗体が果物や野菜のアレルゲンにも反応するために起こります。特に花粉症を持っている人に多く見られ、口の中がピリピリしたり、かゆくなったりします。
診断
食事後に症状が現れる場合、食物アレルギーが疑われます。以下の検査を行って原因食物を特定します。
- 血液検査(抗原特異的IgE抗体検査):経過、症状および摂取した食物の内容などを詳しく聞き、疑われる食物の抗原特異的IgE抗体検査を行います(当院で実施可能)。
- 食物除去試験:乳児に長引く湿疹があり、スキンケアやステロイド剤などの治療で改善せず繰り返す場合、1~2週間の短期的な食物除去を行い、症状の改善を観察します。
- 食物経口負荷試験:食物アレルギーの確定診断と治癒の判断には必須です。1歳~2歳までに受けることが推奨されます。アレルギーが疑われる食品を一定の時間間隔で分割して与え、症状の出現を観察する方法です。必要な場合、専門医がいる病院をご紹介します。
治療
- 除去療法:原因となる食品を食事から除去します。食品表示を確認し、アレルゲンを避けることが重要です。
- 症状が現れた時の治療:症状に応じて抗ヒスタミン薬や気管支拡張薬を使用します。アナフィラキシーの場合はアドレナリン注射が必要です。
アドレナリン自己注射薬(エピペン®)
アナフィラキシーが起きたことがある患者さんは、エピペンを処方されることがあります。正しい使い方を医師や薬剤師に習い、緊急時に備えましょう。
乳児アトピー性皮膚炎と食物アレルギー
乳幼児のアトピー性皮膚炎は、約40%が食物アレルギーを合併しており、スキンケアとアレルゲン除去で湿疹が軽快することがあります。成長とともに次第に減少することが多いです。
食物アレルギーの管理
食物アレルギーの管理の基本は、必要最小限の食物除去と、食べられる範囲で積極的に食べることです。適切な食物管理で、栄養バランスを保ちつつ、食事を楽しみましょう。
さらに詳しい情報を知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。
アレルギーポータル:食物アレルギー
アトピー性皮膚炎
特徴
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下し、さまざまな刺激に反応して炎症が生じやすい疾患です。
①痒みがあり、②左右対称に湿疹が出現し、③慢性の経過(通常は6か月以上、乳児は2か月以上)と良くなったり悪くなったりの反復性を示す。
以上の3つの基本項目を満たすものをアトピー性皮膚炎と診断します。
アトピー性皮膚炎の患者さんの多くがアレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)を持っています。
症状
皮膚炎は、顔・首・ひじの内側・膝の裏側などによく現れますが、ひどくなると全身に広がります。軽症では、皮膚が乾燥していて痒いだけの症状のこともありますが、かきこわして悪化すると皮膚がむけてジクジクと浸出液が出たりします。大きな特徴は、良くなったり悪くなったりを繰り返すことです。
治療
アトピー性皮膚炎の治療は、以下の三本柱で進められます。
-
薬物療法:
- ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬で炎症を抑える
- JAK阻害薬(コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏)も選択肢の一つ
-
スキンケア:
- 毎日の入浴で皮膚を清潔にし、保湿薬を用いて乾燥を防ぐ
- 悪化因子の除去:
- ダニ、ホコリ、ペットの毛などの環境アレルゲンの管理
- 衣類や生活習慣の見直し
- 家族の禁煙
プロアクティブ療法
炎症を抑えた後も、週2~3回のステロイド外用薬やタクロリムス外用薬の使用を継続し、症状の再発を防ぐ方法です。見た目に症状がなくなった後も、炎症が皮膚の深い層に残っていることがあるため、定期的な外用薬の使用が推奨されます。
生物学的製剤
既存の治療で効果が得られない重症患者に対して、サイトカインをブロックする生物学的製剤が使用されます。新しい薬剤としてデュピルマブ(商品名デュピクセント)があり、炎症反応を抑えることで、痒みや皮疹を改善します。
治療のゴール(目標)は、症状がないかあっても軽度で、日常生活に支障をきたすような症状の悪化を抑えることです。適切な治療とたゆまぬスキンケアが極めて大切です。
さらに詳しい情報を知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。
アレルギーポータル:アトピー性皮膚炎
じんましん
特徴
じんましんは、皮膚の一部が赤く盛り上がる膨疹があちらこちらにでき、しばらくすると跡形もなく消える病気です。約7割は原因不明の特発性じんましんです。
症状
食物アレルギー、薬物アレルギー、昆虫の毒、物理的刺激、運動、ストレスなどが原因で、数分から数時間後に膨疹が現れます。膨疹は通常、数十分から数時間以内に消えますが、半日から1日続くこともあります。膨疹の大きさはさまざまで、時には融合して大きな皮疹になることもあります。
治療
抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服や塗り薬が中心です。薬の効果は12〜24時間程度のため、薬を中止すると再び症状が出ることがあります。慢性じんましんの場合は、原因アレルゲンや刺激の回避が重要です。また、ストレスや不規則な生活を避けることも大切です。
じんましんの症状が続く場合や重症化した場合は、医師に相談して適切な治療を受けましょう。
さらに詳しい情報を知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。
アレルギーポータル:蕁麻疹(じんましん)